■サカナクション「怪獣」が記録的な再生数に
ロックバンド・サカナクションの配信シングル「怪獣」が、記録的な再生回数を叩き出している。
【画像】うつ病と向き合いながら制作に臨む山口一郎の姿
同曲は2月20日にリリースされると、同日付のオリコンデイリーストリーミングランキングで1位を獲得(デイリー再生数は199万4279回)。Spotify Japanでも、リリース日の再生回数が国内歴代1位となる大反響を呼び、現在も好調を維持している。
これらの記録は、サカナクションが所属するレコード会社・ビクターエンタテインメントにとっても過去最高の数字といい、バンド初期から宣伝を担当している同社・山上聡氏も「まったく予想していなかったので、とても驚いている」と語る。
ボーカルの山口一郎がうつ病を患い、病と向き合いながら制作した3年ぶりの新曲であること、そしてサカナクションにとって初のアニメ(NHK『チ。-地球の運動について-』)タイアップソングであることも、大きな話題となった。しかし、山上氏は「これまでに配信した作品と同じようにランキングの50位にも入らないと思っていたし、大きな期待はしていなかったんです」と明かす。
■メンバーの反対を説得、そして感謝へ
そもそも、同曲の制作は「イチかバチか」の挑戦だった。体調が安定しない山口が本当に曲を仕上げられるのかという不安があったうえ、メンバーを説得することも容易ではなかった。「メンバーも責任感が非常に強いため、こうした状況下でバンドとして本当に引き受けるべきか、さまざまな意見が出ました。実際に反対するメンバーもいました」。
しかし、原作のファンだった山上氏は、「このアニメとサカナクションは絶対にマッチするはず」という確信を持ち、メンバーを半ば強引に説得して制作に踏み切った。だが、山口の体調不良もあり制作は思うように進まず、予定していたプロモーション施策も次々と延期や中止となった。なんとかアニメの最終回までには間に合い、とにかくほっとした。
そして、配信がスタートすると、驚くべき数字が叩き出された。山上氏は「アニメの世界観にマッチした素晴らしい曲を仕上げてくれたことはもちろん、山口を温かく受け入れてくれたアニメファンの理解力があってこそ」と感謝する。アニメのヒットも相まって、これまでにないほど多くの人に楽曲が届き、当初は制作に難色を示していたメンバーからも「アニメの主題歌をやらせてもらえて本当によかった」と感謝の言葉をもらった。
山上氏は「山口の病状についても赤裸々に伝えてきましたし、バンドの想いやストーリー、楽曲の魅力をしっかり伝えることが大切だと改めて感じています」と感慨深げに語る。そして最後に「病と向き合いながらも、ファンのためにプライベート配信を続けている山口を、ぜひ褒めてやってください」と付け加えた。
“怪獣”となったサカナクションの躍進は、まだまだ続きそうだ。