蔦哲一朗監督の長編第2作『黒の牛』が、4月10~25日開催の「第49回香港国際映画祭」ヤングシネマコンペティション部門にて日本映画としては史上初となる最高賞のFirebird Awardを受賞した。
【画像】受賞トロフィーを手に笑顔の蔦哲一朗監督
香港国際映画祭は1977年にスタートし、世界各国の新作劇映画、ドキュメンタリー、アニメーションからクラシック作品、さらに香港の学生映画に至るまで、50 の国と地域から約200本の映画が上映されるアジアで最も歴史のある映画祭。
『黒の牛』は、禅に伝わる悟りまでの道程を十枚の牛の絵で表した「十牛図」から着想を得て、全編フィルム撮影にこだわり8年の歳月をかけ完成させた。主演はツァイ・ミンリャン監督作品で知られるリー・カンション、田中泯が禅僧を演じ、音楽は生前参加を表明していた坂本龍一の楽曲を使用。撮影も長編劇映画では日本初となる70ミリフィルムを一部使用し、圧倒的なスケールで描いている。
本年度のヤングシネマコンペティション部門審査員は、「第74回カンヌ国際映画祭」(2021年)グランプリ受賞作『コンパートメントNo.6』のユホ・クオスマネン監督、「第74回ベルリン国際映画祭」(24年)でテディ賞を受賞した『All Shall Be Well』のレイ・ヨン監督、映画評論家のデレク・ラム氏の3人。
本作について「独自の哲学的・美的視点と鋭い歴史的洞察、そして鮮やかな自然描写を融合させた、予想を覆す独創的な映像世界。普遍的かつ超越的な瞑想体験」と評した。
蔦監督は「物語性と過度な感情移入を極力排し、映画本来のフィルムによる画力を信じて構成した挑戦的な本作が、世界的な映画祭でようやく評価されて大変うれしく思います」と受賞の喜びを語っている。
映画『黒の牛』は、2026年1月、日本公開予定。